#第6日目|勝沼ぶどう郷−竜王 平成15年(2003)10月4日(土) 天気:曇りのち晴


放浪日記第六日目MAP|勝沼ぶどう郷−竜王


■甲州街道6日目スタート!
放浪6日目の出発点・勝沼ぶどう郷駅 実に半年ぶりであった。街道歩きを始めてから、ここまでブランクが空いたのは初めてであった。春は仕事が忙しくなかなか休みを取ることができず、夏は熱中症になる危険性が高かったので回避して、ようやく秋の気配が感じられはじめた10月のこの日に街道歩きを再開するに至った。
 朝早く自宅を出て、鈍行に揺られること2時間半、前回の終了地点・JR中央本線の勝沼ぶどう郷駅に降り立った私は、駅の目の前に拡がっている山並みを見て「あ〜甲州に来たんだなぁ」と改めて実感。この山に囲まれた感じがとっても好きなのです。
 万歩計をリセットし、さっそく出発(8:12)。久しぶりの街道歩きなのに、珍しく緊張感がまったくない。<寝ぼけ状態?

■秋を感じる甲州街道
道脇には、たわわに実ったぶどうが! 勝沼ぶどう郷駅は、高台に位置しているので、まずは甲州街道までひたすら下る。前回は、朦朧としながらこの坂を登ったものであるが、今回は下る一方なので楽チンだ。道の途中には、前回見られなかった‘たわわに実ったぶどう’があちこちに見られ、フルーツ王国やまなしの本来の姿がいやがおうにも目に飛び込んでくる。って、イヤなわけないけど。

ぶどう



■街道に復帰
勝沼氏館跡 15分ほど下って「上行寺」のある交差点に到着。ここから再スタートだ。道路を挟んで上行寺の前には、かつての『勝沼氏館跡』(国指定史跡)が。現在もまだ発掘作業が進んでいるようで、いずれ復元される日も来るのだろうか。その勝沼氏館跡から西に向かって少し歩いたところに『勝沼宿脇本陣跡』。かつての歴史の遺構があったところには、勝沼町教育委員会が設置した案内碑などが備わっており、町の取り組みがとても嬉しい。また、ところどころに立派な家屋が見られ、往時の面影を偲ぶことができる。ただし、明治期のものが多いようだ。


かつての栗原宿付近。特段見どころは残っていません しかし、さっきから前後左右至るところにブドウ園がある。さすが‘勝沼=ブドウ’という方程式が成り立っているだけある。まだ朝早いのでブドウ園では従業員がいそいそと開店の準備をしているだけだが、あと数時間もするとブドウ狩りに訪れる観光客がわんさかと訪れるのだろうなぁ。こんなところでブドウを購入してしまうと、大きな荷物になってしまうので、見るだけで我慢。
 思ったより車の通行量の激しい道をテクテク歩くと、左側にどこぞのお店の看板に'甲州街道栗原宿'の文字が。どうやらこの辺りがかつての『栗原宿』らしい。特にこれと言ったものは見あたらない。
日川橋付近。秋の風景を味わうことができました さらにテクテク歩いていると、右手に郵便局のある交差点に。ここで一旦国道411号を逸れて左折。やっと車の往来のない道に入ることができてホッと一息。そして道は川にぶつかった。日川と呼び、笛吹川の支流の一つである。本来ならば、このまま直進して川越えをするのであるが、私は右折して、国道411号に再び合流し日川橋を渡る。この橋付近から見た風景は気持ち良かった〜。空気が澄んでいて空がとても高く、コスモスなども咲き乱れ、まさに秋ならではの景色。
 橋を渡り終えた後は、再び国道から逸れて右折して裏道へ。車もほとんど通らず、とてものんびりと街道を堪能できるところだ。その後、川に沿う形で道は続き、ラブホテルが見えてきたところで三度国道411号に合流。川を挟んで右手前方にはホテルが何軒か見られる。どうやら、あの辺りが石和温泉郷、かつての『石和宿』である。
 三度合流したこの国道411号、さっきから歩道がまったくないところが続く。しかも、車の交通量はかなり激しく、ビクビクしながら急ぎ足で歩く。そのまま笛吹橋を渡り石和温泉のある対岸へ。この辺りは、本来ならば川越えなのであるが、現代の橋を歩くのは仕方ないでしょう。


路肩のない道の脇には、こんな道がありました 橋を渡り、そのまま左折をして歩き始めようとしたところ、笛吹川沿いの道は、ついに路肩もないような道と化していた。なんて不親切な町なんだ!・・と思っていたが、しっかりと歩行者が安全に歩けるような道が確保されていた。暴言お詫び致します、石和町さん。でも、歩道というより、道沿いに家を持つ住民の車道とも取れたけど。
権三郎通り それでも、車のほとんど通らない道は快適だ。さらに、道沿いに植わっている松並木がさらに雰囲気を良くしている。その道も終わり、別の道に合流。もちろん車の往来する通りである。往来の台数が少ないのが救いか。この合流地点には、『笛吹権三郎の像』が設置されていた。この話は別に書くとするが、なんとも泣ける話である。これもあってか、この辺りの甲州街道は権三郎通りと名づけられている
 途中、自販機でペットボトルを購入。水分補給をしつつテクテク歩き、もうお馴染みの国道411号に合流。やはり交通量が激しい。それもあってか拡幅工事を行っていた。車の走る道を拡げるのも良いけど、歩道だけはきちんと整備してくれよー。欲を言えば、自転車専用道も付けるのが理想なんだけどなぁ。
 『遠妙寺』『本陣跡』を横目に、緑生い茂る『小林公園』でトイレ兼休憩を取ることに。10月とはいえ、かなり強烈な日差しだ。そういえば、昨年のこの時期も美濃路を歩いていて、同じようなことを経験したような・・・。
 十分休憩を取ったので、再び出発。国道沿いは相変わらず車の往来が激しい。そして、石和の中心地を抜けると、中心地特有の賑やかさが消え、車の往来だけが際だつ退屈な道が延々と続くことになる。こういう見どころのない単調なところは、ただひたすら歩くしかないので、周りの景色を眺めたり、ロードサイド沿いの店舗に立ち寄ったりしながら気持ちを紛らわしつつ、テクテクと西を目指す。


■山梨学院大学
山梨学院大学 かなり歩いたところで左手前方に、大きな建物が見えてきた。どうやら山梨学院大学だ。大学周辺は、最近開発されたようで、歩道も広々と確保されており、周辺には同大学の学生と思われる若者がウロウロしていた。山梨学院大学と言えば、箱根駅伝などが有名だが、走っている人は見かけなかった。<当然だっ
 大学を過ぎると、今度は多くの高校生達と遭遇。ちょうど授業が終わった時間帯にぶつかってしまったようだ。「酒折宮」の案内板のところで一旦甲州街道を逸れて右折。『酒折宮』を訪ねることにする。JR中央本線の駅名にもなっている由緒あるお宮さんのようだが、訪れるのは今回初めてだ。ところが、ここも先ほどの高校生の軍団に占領されており、ろくろくゆっくり出来ないまま後にした。時間帯が悪かった・・・。


■甲斐善光寺に立ち寄る
甲斐善光寺。迫力があります 本来ならば、ここで今来た道を逆戻りするのが基本であるが、高校生の団体を避けるべく、甲州街道に戻らず、このまま道なりに次の目的地に向かうことにした。その目的地とは、『甲斐善光寺』。ご存じ長野市と同じ善光寺である。川中島の戦禍が及ぶことを恐れ、武田信玄自らが長野の善光寺の本尊以下諸仏を甲府に移し、自ら開基したお寺だ。そうしてようやく善光寺に到着。
 とても立派な門の奥には、本殿が見える。思っていたより人が少なくホッとしつつ、手を清めた後お参りをすることに。持っていたJR東日本の割引券により2割引で拝観(500→400円)。受付で鳴き龍、お戒壇の説明を受ける。鳴き龍は日光の東照宮で体験したことがあるが、お戒壇とは?・・無知な私は最初なんのことかわからなかった。

甲斐善光寺

 まずは、鳴き龍。竜の絵が描かれた天井の真下で手を叩く。「パァァッァァアァァァンンン〜〜〜」「おおー!すごい響く〜!」日本一を謳うだけあって、かなり気持ちよい鳴き方だ。
 次いで案内表示に従って本殿内を裏手に廻るとお戒壇の入り口が。どうやらお戒壇とは「ご本尊の真下に「心」の字に描かれた回廊があり、そこにある錠前に触れるとご本尊と縁を結ぶことができる(極楽浄土に行ける)」ことを指すようだ。さっそく中に入る。
 薄明かりに照らされた9段の階段を降りた地下部は、本当の真っ暗闇。手探りで錠前を探す。しかし、本当の真っ暗闇とは恐い。ビクビクしながら左手を壁に、右手で前方を手探りしながらゆっくりゆっくり歩くと、前方に一筋の光が。おおっ・・錠前のあるところにはわかりやすいように光があるんだ〜と思い、そこに到着すると、見覚えのある階段が。なんと入り口に逆戻り!どうやら途中で錠前に気づかずに通過してしまったらしい。仕方がないので、もう一度暗闇に入ることに。今度は、腰の辺りにあるという受付で聞いた言葉を頼りに、少し屈みながら左手で腰の辺りを探していると、何かが手に当たった。両手でさわってみると、大きな錠前だった。これで極楽へ行けるぞー!と意気揚々に、暗闇を抜け再び地上へ。お化け屋敷と勘違いしないようになんてコメントがお戒壇入口部に書いてあったが、お化け屋敷より恐いんじゃないか・・。しかも、団体ならば、大勢で入るのできっと怖さは半減されるかと思うのだが、なまじ一人だったので、静寂の暗闇で一人というのは、緊張感も3割増しだった。
甲斐善光寺。やっぱり迫力がありますっ 再び受付に戻ってきて、おばちゃんとしばし雑談。ちょうどお昼時ということもあり、団体客がいなかったとのことで、他の時間ならもっと混んでいたという。そう考えると、さっきの酒折宮とは逆に、良い時間に訪れたな〜と。おばちゃんにお礼を言って、本殿に隣接している宝物館を見学。その後、境内のお土産屋で売っていた巨峰ソフトを購入(300円)。あまりに暑かったのと、せっかく山梨に来たので・・ということで。ソフトクリームをペロペロなめながら甲州街道に復帰し、再び西に向けて歩き出した。


■曲尺手状に折れ曲がる道
曲尺手状になっている街道。甲府柳宿も近いっ 街道に復帰してすぐのところで身延線の高架下を通過。道は曲尺手(かねんて)状に折れ曲がっている。ここで立派な建物を発見。歴史がない普通の民間宅はできるだけ撮影しないようにしているのだが、かなり立派な由緒ありそうな建物だったので思わずパシャリ。すると、後で調べたところによると、やはり歴史のある建物だったようだ。
 さらに西へ。そろそろ甲府市の中心地が近づいてきているようで、空気がザワザワし出している。そして、再び曲尺手状に道が直角に曲がっているところを通過。この近くにある身延線の駅名は金手(かねんて)。関係あるのか。
 この辺りがかつての宿場『甲府柳町宿』だったようだ。現在は、往時の面影はほとんど残っていない。そして、歩行者も徐々に増えてきた。そんな山梨一の繁華街を持つ中心地をテクテク。途中、道を間違えたりしたが、それでもビルの間を縫うように右へ左へクネクネと歩く。相生地区で再び寄り道をしつつも、さらに西へ。『身延道分岐点』や荒川に架かる荒川橋を通過後、歩道がなくなる。またかよー!甲州街道は、歩道の途切れる箇所が結構多いのですこぶる危険だ。国交省よ、車中心社会で物事を考えるな!


■山梨県立美術館に立ち寄る
山梨県立美術館前のイチョウ並木。徐々に色づき始めていました ここから再び見どころのないところが続く。すでにお昼時を通り越して、お腹を空かせながらも、途中で飲料を補給しつつひたすらテクテク歩く。歩きながら、何度か後ろを振り返ってみたが、この日は雲が厚く残念ながら富士山の姿を見ることができなかった。甲州街道を歩く要素の一つ「富士山」は、街道歩きの時になんとしても見たいのだ。
 さらに歩くと、前方にうっすらと色づき始めたイチョウの並木が見えてきた。どうやら今回の目的地の一つ『山梨県立美術館』のようだ。この美術館は、画家・ミレーの絵が展示あることで有名なところ。「芸術の秋」ということで、さっそく立ち寄ることに。美術館に入る前に、美術館も含んだ公園内のベンチで軽く休憩。久しぶりの街道歩きなので、ちょっと足がついていっていないようだ。
山梨県立美術館 この公園、とてもきれいに整備されており、とても気持ちが良く、子供が駆け回って遊ぶ姿を見ながらのんびり休憩。子供は無邪気だなぁ。大人になるにつれて、色々な知識を吸収していくけど、失っているものもたくさんあるんだろうな。そんなことを思いつつ、休憩を終えて、さっそく美術館へ。
 美術館では、企画展のポール・ホリウチ展が開かれていたが、特に興味が湧かなかったのと時間の関係上で、常設展のみを見ることに。常設展には、全部で91点の作品が展示されており、そのうちミレーの作品はわずか15点のみだった(当美術館所蔵は70点)。全てミレーの作品だと勘違いしていたが、そうではなかったらしい。もっとも、久しぶりに色々なアーティストの絵画に触れることができて、自らの感性を磨くことができたかな。っていうか、そんなに感性は鋭くないし、絵に関してもど素人なんだけど。


■竜王駅で本日の街道歩きは終了
本日の終着点・竜王駅 その後、美術館で絵を堪能した私は、美術館を後にして再び街道を歩きを始めることにした。先ほどから空は厚い雲に覆われ始めたこともあって、全体的に暗くなってきている。また、時間的にもそろそろ暗くなってくる時間帯だ。「今日は、当初の予定通りの竜王駅で終えることにしよう。」そう思った私は、これまでと同様のペースで歩き始めた。
 そして、美術館から約2q、竜王駅への分岐点に到着。ここで一旦甲州街道を外れる。そこから数百メートルでようやく本日の終着点・竜王駅に着いた。ふぅ〜今日も一日無事に歩き終えることができてホッと一安心。まずは電車の時刻表を確認してから待とうとしたが、もうすぐ臨時の快速電車がホームに来ることが判明して、余韻に浸る間もなく、急いで改札をくぐったのであった。(つづく)
→第7日目 竜王−日野春


歩数計 36,364歩
カロリー 1,532.1kcal
距 離 21.82km
時 間 8:07〜16:44
支 出 交通費|3,040円(山梨フリーきっぷ往復分含む)
飲食費|1,413円
その他|900円(拝観料、観覧料)

2003.10.19update
2007.04.30renewal


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