実に1ヶ月半ぶりの放浪であった。天気予報を見て天気が良さそうだと知り、急遽歩くことにしたのだった。段々と出発地点が遠くなってくるので、頑張って5時過ぎに起きて、電車を乗り継いで前回終えた上野原駅に到着。
　電車を降り立つと「寒いぃぃぃぃぃぃぃ〜！」日はようやく昇りつつあるものの、気温はかなり低い。あまりの寒さに駅の自販機で缶コーヒーを購入。しかし、じっとしていると寒さが増すばかりなので、歩いていれば温かくなるだろうと、万歩計をリセットしてまずは旧道復帰を目指して歩き始めた(7:25)。上野原駅は甲州街道からちょっと離れたところに位置しているのだ。

　しかし寒い！地面には雪がところどころに残っている。甲斐国、現在の山梨県は随分と雪が降っているらしい。昨日今日降った雪ではないことがわかる。真っ白な息を吐きながらテクテク歩き、20分ほどしてようやく前回終えた旧道(国道20号)に復帰。まずは、その交差点部にあるコンビニで飲食料の調達をする。この先、お店がある保証はないのだ。

　寒いながらも元気に再出発。この辺りは、かつての上野原宿の中心部に当たり、ところどころに往時の面影を感じることができる建物が見られる。しかし、町内にあった案内板に記載されていた本陣・脇本陣跡らしきものは発見できず。

　国道沿いをテクテク歩き、歩道橋のある交差点で国道を外れて左に曲がる。一気に車の往来がない道となり、ホッと一息。そのまま進むと分岐点に差しかかった。右に行くことはわかっていたが、よぉく見ると何故か右に曲がる道が2本ある。どちらか迷った末に、新しい道を避け古そうな細い道（写真だとわかりづらいですが、右に続く白線のクッキリ見える登り坂ではなく、その先に道があります）を歩くと、前方に歩道橋が見え、道が正しいことがわかって一安心。歩道橋から次の宿場・鶴川宿がよく見える。そのまま歩道橋を渡って国道を横切った後、道の反対側へ行き、そのまま裏道へ。

　テクテク道を下り、『鶴川』を渡るとそこから『鶴川宿』。宿の入り口部にはポケットパークがあり、平成14年7月に作られた真新しい「鶴川宿」と書かれた『石碑』があった。ペンを取りだしてメモなど取ろうとしたが、寒すぎて手がかじかんでしまっている・・。それでも元気に先を目指す。
　鶴川宿は、国道等の路線から外れたためか、はたまた朝の早い時間であるからなのか、とても静かで落ち着いた昔ながらの街並みであった。しかし、特にこれといった史跡は残っておらず先を急ぐ。その後Ｙ字路を左へ。急な登り坂となる。

　登り坂をエッチラ上っている途中で鶴川宿が終わり、家屋も消え失せ回りは森ばかりとなる。しかも、日がほとんど当たらないためか、道には雪が残っていてすこぶる危険である。それでも、なんとかその森を抜けると、急に前方が開けてきた。どうやら中央高速道路にぶつかったようだ。その中央高速道路沿いを歩き、中央高速を横断している陸橋のところで左に。

　そのまま道なりにテクテク歩くと、前方に説明板らしきものが見えてきた。どうやら『大椚一里塚跡』のようだ。現在は、説明板があるのみであるが、甲州街道ではこれをも貴重な史跡なのである。しかし、上野原町（現・上野原市）は、ここを含めて4箇所の一里塚があり、全ての場所に説明板があるのだ。町としての配慮がとても嬉しい。
　さて、大椚一里塚跡を過ぎた後、さらに道なりに。細い道沿いに家が並んでおり、なんとなく良い感じだ〜。しかも、寒さもようやく和らいできて一安心。さらに歩くと、前方に神社が見えてきた。これは、『吾妻神社』で、境内から子供の声が聞こえる。こんな寒い日に朝から遊んでいる子供がいるなんて・・・ホント子供は元気だなぁ〜。

　先に進むと、道は下り坂へ。ところが道を下りきったところで、甲州街道が続いている道が工事中のため立ち入り禁止になっていた。仕方がないので、近くにあった迂回図に従って右折して中央高速道路の下のトンネルを通過。通過後左に曲り、再び中央高速道路沿いを歩く。
　この辺りの中央高速道路は、移設工事を行っているらしく、かつて高速道路だったところを歩くようになっていた。今は昔とは言え(元)高速道路を歩く機会なんてめったにないぞ〜！
　そして、再び分岐点に。

　ここで私は道を間違えて右に行ってしまい、再び中央高速道路を渡ってしまったのであるが、正解はここを左に行く。先ほどの工事中箇所が思考回路の歯車を狂わせたのだ。しかし、この時は道を間違えたのだとは露にも思わず、テクテクと歩いていた。すると、少し高台に上ったところで、前方に見える山々の上にひょっこりと富士山の姿がっ！おお〜感動〜！しかも、この日は空気が澄んでいるらしく、稜線もくっきり見ることができる。今日放浪に来て良かったなぁ〜。

　まだ頭の部分しか見えていない富士山に大いに勇気づけられた私は、先を目指す。と言っても、この時点でもまだ間違いに気づいていない。そうこう歩いているうちに、右手にサービスエリアらしきものが見えてきた。あれ？・・ここでようやく道を間違えていたことに気づく。とりあえず、持ってきた地図を頼りになんとか甲州街道に復帰。

　復帰したあたりが、どうやら『野田尻宿』のようだ。野田尻宿は、先ほどの鶴川宿と同じく落ち着いた街並みを形成していた。しかし、途中『明治天皇御小休所址石碑』を右手に、鶴川宿にもあったここが宿場だったことを示す『石碑』などが建っているほか、大きな史跡はないようだ。それでも、昔ながらの立派な家も残っていたりして、気持ちの良い宿場である。

　その宿場もあっという間に終わり、県道と合流した後、『西光寺』という大きなお寺にぶつかったところで、右の細い道へ。きちんと案内板も出ている。
　そのまま細い道をテクテク歩き、中央高速にぶつかった後、陸橋を使って反対側へ。ところが、そこから道がアスファルトではなくなる。なんとなく心配になったが、そのまま森を抜けると県道にぶつかった。抜けた側には、「旧甲州街道」と書かれた案内板があったが、江戸側にもわかりやすいように案内板を立ててくれー。

　その後、ほとんど車の通らない県道を歩くと、右手に説明版を発見。『荻野一里塚跡』である。それを横目にさらに先へ。再び右手に中央高速道路が見えてきた。そのまま高速道路沿いに歩くと、最近整備されたらしき道路となった。そして前方には、これまた新しく整備されたばかりの(新)談合坂サービスエリアが見えた。その奥には富士山も！（写真中央にちょっとだけ写ってます）
　このサービスエリアには、このまま歩いて入れるようだが、そんなに疲れていなかったので、寄らずに先を目指すことに。

　中央高速道路を渡ったのち、すぐの所右手に『矢坪坂の古戦場跡の説明版』があった。その説明版には旧甲州街道の道も記載されており、それによると旧甲州街道は、車も通れないような細い山道を歩くようだ。さっそくその道を歩く。

　途中、大きな犬にワンワンと吠えられながら山道を歩く。山道と言っても、すぐそばを県道が走っているので、大したことはない。『座頭転がし』『この上天王様』と書いた説明版を横目に歩いていると、前方に家屋が見えてきた。どうやら新田地区の集落のようで、山道も「ようやく」終わったようだ。＜ってさっきまで大したことないって言ってたのに

　その後、県道と合流したところ付近に「ここより『犬目宿』」の案内板があった。この案内板は、上野原宿、鶴川宿、野田尻宿全てにあったものであり、どうやら上野原町（現・上野原市）の功績のようだ。ありがたやありがたや・・。
　そのまま道は上り坂に。今日は上ったり下ったりで、足への負担が大きく、ちょっと心配だ。

　上り続けていると、左側に『犬目の兵助の墓』という案内表示があり、それに導かれるままに細い道を上ったところにお墓があった。ふと振り返ってみれば、なんと立派な富士山の全容がドーンと見えるではないかっ！
　その昔、葛飾北斎が冨獄三十六景を完成させた際に、「甲列犬目峠」からの富士山を描いていたが、まさにここがそうなのだろう。この富士山を見せてくれた犬目の兵助に感謝せねば。

　再び甲州街道に復帰。意気揚々と先を目指すと、前方に人だかりが。みな一様に消防のはっぴを着ている。これから何かイベントでもあるのだろうか。その人だかりを過ぎ、『犬目兵助の生家』『明治天皇御小休所跡石碑』などを横目に歩く。ここも大規模開発の波から取り残されたためか、とても落ち着いた街並みである。と、あっという間に宿場も終わってしまった。途中、問屋場やもう一つの本陣跡などがあったようだが気がつかなかった。