#第1日目|三島−修善寺 平成15年(2003)12月13日(土) 天気:晴


下田街道行程図〜第一日目|三島−修善寺


■下田街道とは

 甲州街道を歩き終えてから一ヶ月も経っていない12月中旬。男は、次なる街道を歩きに行くために、電車に揺られていた。今日から東海道の脇街道の一つ「下田街道」を歩くのだ。

 下田街道とは、東海道の宿駅でもある「三島」から伊豆半島の突端にある「下田」まで、伊豆半島中央部を縦断している街道のことである。
 平安末期には頼朝が旗挙げをし、江戸時代には吉田松陰やハリスが往来した街道であり、そして大正から昭和にかけて川端康成の伊豆の踊子や天城湯ヶ島出身の井上靖らの文学が薫るという、長きに渡る歴史・文化の感じられる街道なのである。

三島駅の向こうには富士山の姿が
【三島駅と富士山】
 下田街道は、距離にして約70kmなので、計3回くらいで踏破したいな〜なんて考えているけど、果たしてどうなることやら。

 三島駅に到着(8:37)。駅の奥に見える富士山を背に、下田街道出発地点である三島大社まで足慣らしも兼ねてのんびり歩いてゆく。

下田街道マップ(プロローグ)|三島駅〜三島大社(下田街道基点)まで 富士の雪解け水
清らかな水
慶応三年(1867)意外に新しい
三島大社神門
威厳が感じられます
三島大社本殿
鳥居前から下田街道を望みます
街道基点より


■三島大社参拝&下田街道マップゲット!

 三島大社に到着。さっそく万歩計をリセットしてスタート(9:00)。下田街道は、三島大社の鳥居前からまっすぐ南下しているのだ。が、その前に三島大社に立ち寄る。
 朝早いこともあってか境内に人は少なく、巫女さんらが掃除をしていた。そうした人たちに敬意を払いつつ参拝。
 旅の安全祈願をした後、同じ境内にある宝物館に立ち寄る。実は、この宝物館に下田街道のルートが記された本が置いてあるという情報を事前に得ていたのだ。宝物館に入ると、その本はすぐに見つかった。ちょっと値段が高めで、しかも思ったより厚い本だったが迷わず購入(2,500円)。地図は別冊刷りになっていたので、カバンに入れていつでも取り出せるようにした。これで準備万端!再び鳥居前に戻り、今度こそいざ下田に向かって歩き始める。

三島大社。ここから下田街道ははじまります

下田街道マップ1|三島大社〜大場地区



■富士を背に街道をゆく
振り返ってみると富士山が
【振り返ると富士山が】
 歌川広重の東海道五十三次三島宿の浮世絵に描かれた鳥居を基点として、下田街道はまっすぐ南へ向かって続いている。それがため日差しを真っ向から受ける形になってしまう。朝早く且つ冬なので、それほど日差しは強くないと思っていたのだが、眩しさだけは季節に左右されることなく、あまり変わらないようだ。

 左手の郵便局手前に『伊豆国分尼寺址石碑』、さらに進むと、左手に『言成神社』。ここで富士が気になって振り返ってみると、道の奥にその雄姿が良く見える。まるで富士に向かって道が続いているようだ。うーん、素晴らしいー。


■下田街道ゆかりの人物 源頼朝
間眠神社
【頼朝いわれ(ゆかり?)の間眠神社】
 さらに進む。今度は右手に「源頼朝いわれの地」と書かれた看板があるので行ってみる。そこにはこじんまりとした『間眠神社』。「まどろみ」と読む。早くも頼朝関連史跡に出くわし、この先どれだけこれに関わる史跡が出てくるのか気になるところだ。なにしろ、今日はこの「頼朝」関連史跡がメインなのだ。

 頼朝は、鎌倉幕府を開いた有名人物だが、従兄弟の木曽義仲を弟の義経に始末させ、その義経を自ら始末したという冷徹なイメージがあるので、個人的には記憶が薄い。


■富士にみとれる
振り返って富士山を見る
【踏切のところで振り返って富士山を見る】
 伊豆箱根鉄道駿豆線の踏切を渡る。少し開けたことによって、富士の全貌が見える。

 それにしても、さっきから振り返ってばかりだ。あまりの富士の見事さに心を奪われてしまっているのだ。
 写真では、全てを表現出来ていないが、富士からどんどん離れているのに、逆に富士が迫ってきているように見える。ちなみに、この伊豆箱根鉄道は、この先、本日終着予定の修善寺まで何度も交わることになる。
大まんじゅう屋さん
【大まんじゅう屋】
 踏切を越えてほどなく左手に「大まんじゅう」と書かれたお店がある。ここには大きなおまんじゅうが売っているとのことだ。食べる気はしないが、一度見てみたいものだ。
 どうでもよいが、さっきから歩道が右に、左にと片側のみに存在している。歩道があると言っても、これははっきり言って不親切だ。

 道は緩やかな登りにさしかかり、そのまま左にカーブ。カーブの下には川が流れている。ちなみに、ここで振り返ってみた富士は、少し雲がかかり始めていた。橋を渡り終えた後、大場と書かれた信号にぶつかるので、ここを右折。つまり、再び南下を続けることになる。

下田街道マップ2|大場〜韮山


富士山に雲が・・
【富士が雲に覆われてしまった・・】
 道の右側に立派なお寺がちらほら続く。国道に合流する手前でいつものごとく古本屋に立ち寄る(30分)。井上靖氏の小説を数冊購入。さすが地元だけあって結構置いてある。

 再び街道に復帰し、ほどなく国道バイパスと合流し、虹ヶ橋にさしかかる。道幅が広くなったことによって空間が開けたので後ろを振り返ってみると、富士山のてっぺんが雲にかかってしまっている。もう今日はダメかなぁ。


■道を間違えそうになるも・・・
 しかし国道県道問わず、コンビニが豊富な街道だ。適当なところで飲料補給をする。ローソンに入ったのだが、なんと静岡限定と称して、「お茶もち」「お茶チョコレート」なるものが販売されていた!東海道を歩いている時は見なかったが、新しく販売されたのか。

狩野川沿いの景色
【狩野川沿いの風景】
 そのまま国道をゆく。原木交差点で曲がろうと思うも、念のため地図を見てみる。わぉ・・・危うく道を間違えるところだった。今までなら躊躇無く曲がっていただろうが、こういうところで地図を見て確認できるなんてゆとりあるじゃん<自分(久しぶりの自画自賛)。

 交差点の先に『荒木神社』。鳥居横に「NHK大河ドラマ「草燃える」ゆかりの地」と書かれた案内板がある。また、神社周辺には、昔風の木造家屋が数件見られる。そのままさらに進むと、右手に土手が見えてきたのでさっそく登ってみると、そこには狩野川をはじめとした、自然豊かな原風景が拡がっていた。しかし、写真を撮るもあいにくの逆光で見づらい。


■江川担庵の江川邸を見学
江川邸
【江川邸。表札には江川と・・】
 土手を降りて、ほどなく八坂神社のある変則交差点を左折。ここで一旦街道を逸れて、あるところを目指す。
 その目的地まで約2kmだ。結構距離があるが、事前予習の際に迷った末に行くことに決めていたので迷いはない。

 途中、昔の雑貨屋風のお店で飲食料をゲットしつつ、道なりに進むと大きな駐車場に到着。どうやら目的地・江川邸に着いたようだ。表札を見てみると、ご丁寧に「江川」と書いてある。なかなか細かいところまで凝っているぞ。

 私が江川担庵を初めて知ったのは津本陽の小説『椿と花水木』である。これは、サブタイトルにジョン万次郎漂流記と記されている通りの内容であるが、そのジョン万次郎が日本に帰ってきてから師事したのが、この江川担庵だったのである。

 ちょうどお昼時で運が良かったのか、駐車場に大型バスは一台も止まっておらず、自家用車も数台止まっているのみ。これは落ち着いて見学できるぞーと、さっそく屋敷に入る。建物は、大変立派で、構造も綿密に計算しつくりされたものである。
 しかし、結局運は悪かった。なぜなら、うるさいおばちゃん2人組と同時間帯に見学せざるをえなくなってしまったから。ベラベラと話しまくって大迷惑だ。話をするのはいいけど、もう少し小さい声で話せないのだろうか。もっとゆっくりしたかったのだが、あまりのうるささに辟易して屋敷を出て、隣接する郷土資料館を見学し江川邸を後にする。
江川邸内部の様子 江川邸外観


■蛭ヶ小島で休憩
 次に向かったのは蛭ヶ小島。ここは、源頼朝が旗挙げをしたところで有名だ。現在は公園となっており、ベンチやトイレ等が置かれていたので10分ほど休憩していく。
 しかし、この蛭ヶ小島、周辺は何もないところだ。頼朝は、当時どのような気持ちで打倒平家旗挙げを行なったのだろう。今の平和な世の中にどっぷり浸かっていては思いもよらない気持ちだったのだろう。

 ・・・再び歩き出す。
蛭ヶ小島〜頼朝配流の地 周辺風景

下田街道マップ3|韮山



■静岡県人はおおらかな性格?
 まずは、下田街道へ復帰を目指す。細かい話だが、一応旧道全踏破を目指しているため、先ほど道を逸れた八坂神社の変則交差点へ戻る。これでも、一応こういうところにこだわっているのだ。<ただし、妥協率も高いが・・・

 街道復帰後、南に向かって歩いていると、「とんかつ弥次郎兵衛」手前に細道があるので右折すると、北條氏ゆかりの真宗『成福寺』。さらに南に行ったところのパチンコ屋の前を右折すると『願成就院』。彩られた木々の見られる落ち着いた寺院だ。さっそく門をくぐると、前方から今ひいたばかりと思われるおみくじを大声で読み上げながら歩いてくる若い女性3人組が。さっきの江川邸でのおばちゃんといい、伊豆地方の人は皆大声で話す。きっとおおらかな人が多いので、これくらいのことは日常茶飯事なのだろう。
成福寺 願成就院


■韮山反射炉にて
土産物屋の方が目立ってるぞ・・
【土産物屋に隠される韮山反射炉】
 再び街道を南下する。道の両脇が賑やかになってきた辺りが伊豆長岡。もちろん温泉で有名なところだが、その温泉地は駅から離れたところに位置している。伊豆長岡駅前を過ぎ、ガソリンスタンドのところを左折。江川担庵関連第二弾となる韮山反射炉を見に行くのだ。これも担庵により作られたという。長く続いた鎖国時代において慧眼の持ち主だ。
 これまた街道から2kmほど歩いて到着。なんと、反射炉の周辺にはたくさんのお土産屋が・・・・ちょっと「ひいて」しまう。日本人って、どこでも観光地化してしまうから、歴史も風情もへったくれもない。このお土産屋のせいで、反射炉そのものも近くに行かないとよく分からないという有様。

 さっそく受付でお金を支払い見学しようとすると、後ろから「ご案内しましょうか」の声が。なんか違和感を感じたが、せっかく声をかけてくれたので案内してもらうことに。細かいディテールまで詳しく説明してくれたが、最後に何故か一つのお土産屋に連れていかれた。実は、そのお土産屋の店員だと知ってガッカリ。反射炉を見た後に、立ち寄って何かお土産を買おうと思っていたが、その気もなくなり、反射炉で勉強したことも薄れ、早々にここを後にする。ここは、また機会を見てリベンジせな。

韮山反射炉

下田街道マップ4|伊豆長岡〜田京



■電線類地中化を要望!>伊豆の国市(旧伊豆長岡町)
富士山と伊豆箱根鉄道〜電線が邪魔ー
【電線が邪魔】
 再び先ほど来た道を戻る。国道に合流する手前で左折。ここから裏道が続くのだ。しばらく進むと、道は伊豆箱根鉄道駿豆線、国道と並行して走る形となる。富士山はどうなったかと振り返ってみると、残念ながら頂上付近が雲に覆われてしまっている。と、そこへ運良く電車がやってきたので一緒に写真に収めるも、たくさんの電線が横切りイマイチ。やはり電線類地中化は必須だ。この先、見どころもなく自然とピッチがあがる。

日の沈みかけた広瀬神社
【木が生い茂る広瀬神社】
 街道は、ここで急に向きを変えて鉄道、国道を横切る。なぜこのような道になっているのかわからないが、今でもその道は現存している。その突端部分に『六角堂跡』『田中学舎跡石碑』等がある。それらを見つつ再び国道、鉄道を横切って元居た側に戻る形となる。
 田京駅横を通過。そのまま進むと右手に鬱蒼と木が生い茂る『広瀬神社』があったので20分ほど休憩。日も沈みかけているので、薄ら寒い。今日は暖かい一日だったが、なんと言っても12月だ。身体が冷え切ってしまわないうちに再び歩き出す。

下田街道マップ5|大仁〜修善寺



■人と車で混み合う大仁駅前
大仁駅周辺は大混雑
【大仁駅周辺は道も狭く交通量も多い】
 細い道をゆく。この辺り、車がすれ違うのもやっとの幅だが、車通りがかなり多い。どうやら抜け道となっているようだ。さらに進むと人通りも激しくなってくる。どうやら大仁駅が近いようだ。さすが駅周辺なので店舗が多く見られ、歩行者なども多いが、それに勝るとも劣らず車が多く、大変危険である。逆に混んでいるため、車もノロノロ運転になっていることが功を奏しているとは皮肉なものだ。

 しかし、この大仁駅周辺の商店街、シャッターを閉めたお店が点在していた。おそらく国道沿いに大型店舗が出店してきているのだろう。その一方で、昔ながらの街並み家屋も見られ、雰囲気は良い。


■意外に水量のある狩野川(に架かる橋)を渡る
 商店街を抜けると、賑やかさが消え、車の往来だけが残る。車に気をつけながら歩き、分岐点にぶつかるので道なりに右へ。その分岐点にはひっそりと芭蕉句碑が建てられている。句碑を後にすると、ほどなく要塞チックな赤い橋が見えてくる。橋の下には狩野川が流れている。かなり上流部に来ているはずなのに、意外に水量がある。橋を渡り、そのまま交差点を直進すると、道は細くなるが先へと続いている。
 この細い道沿いにも、趣のある家屋が並んでいる。残念ながら、すでに日が山の向こうへ沈んでしまったため、ちょっと見づらかったのが惜しまれるところだ。<写真にも収めにくい
狩野川を渡る 狩野川


■下田街道第1日目終了!
本日の終着点・修善寺駅
【修善寺駅は明かりが灯りはじめていた】
 国道に合流。そのまま国道沿いを進むも、途中右に進む細い道があるのでそちらへゆく。しかし、どこまでが旧道なのかわからないまま、反対側へ抜けてしまう。この辺りが良いところだろうと、街道を逸れて本日の終着点・修善寺駅に向かう。
 駅に向かう途中、再び狩野川を越える。車の通行量は相変わらずだが、どことなく落ち着いた街を感じさせるところだ。温泉地は駅から離れたところに位置しているが、そこも良いところなのだろう。職場の上司が良い温泉だと話していたし。
 そんなことを思っているうちに修善寺駅に到着。暗くなりかけた中、修善寺駅は明かりが灯りはじめていた。(つづく)
→第2日目|修善寺−河津大滝 へ


歩数計 37,687歩
カロリー 1,587.9kcal
距 離 22.62km
時 間 9:00〜16:43
支 出 交通費|2,800円(青春18きっぷ使用)
飲食費|1,311円
その他|3,000円(施設見学料、資料)

2004.6.20update
2007.1.20renewal


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